「奇跡のリンゴ」

青森のリンゴ農家、木村秋則さんを特集したNHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の放送からさらに取材を追加し書籍化されたものです。

当時は荒唐無稽と思われた無農薬でのリンゴ栽培に総てをかける、壮絶な半生が綴られます。

前半はいわゆる成功者の美談風に話が進んでいくのかと思いきや、中盤以降では暗澹たる苦労話になります。貧困や、暴行被害、自殺未遂などありとあらゆる不幸が襲いかかる苦難の状況にも負けず、己の信念を貫き通します。決して誰かにやらされるのではなく、自分のプライドとして仕事をやり遂げる。

自然の中に孤立して生きている命など存在しない。バラバラに切り離すのではなく、ひとつのつながりとして理解すること。科学者がひとつひとつの部品にまで分解してしまった自然ではなく、無数の命がつながり合い絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。

印象的だったのは、自殺直前まで追い込まれていた時に見つけた自然の中で生きているリンゴの姿。畑では農薬や肥料によって管理された中でないと生きていけないものが、自然の中ではたくましく生きているんですね。その姿を見て、自然本来の生命力を肥料や農薬が邪魔していることに気が付く。

リンゴが病気になるのは、肥料を与えすぎてしまうせいでリンゴの木が持つ本来の力を失ってしまうせいだと。雑草や、害虫にも自然本来の理由がすべて絡み合っていて、複雑系そのものだなと思いました。